基本的な流れ
「MySQLにTPC-H」「PostgreSQLにTPC-H」とほぼ一緒です。
対象DBMSとベンチマークの選択
hammerdb>dbset db ora Database set to Oracle hammerdb>dbset bm TPC-H Benchmark set to TPC-H for Oracle
詳細パラメータの表示と設定
hammerdb>print dict Dictionary Settings for Oracle connection { system_user = system system_password = manager instance = oracle rac = 0 } tpch { scale_fact = 1 tpch_user = tpch tpch_pass = tpch tpch_def_tab = tpchtab tpch_def_temp = temp num_tpch_threads = 1 tpch_tt_compat = false total_querysets = 1 raise_query_error = false verbose = false degree_of_parallel = 2 refresh_on = false update_sets = 1 trickle_refresh = 1000 refresh_verbose = false cloud_query = false }
TPC-Cと、だいぶパラメータが変わっています。
GUIのメニュールートと微妙にマッチしてないので、GUIベースでしかパラメータの解説がない公式ドキュメントとの対応関係を見るのが少し大変でした。
tpchパラメータの意味は以下のとおりです。
名称 | 説明 | 初期値 |
---|---|---|
scale_fact | データのサイズです。 | 1 |
tpch_user | テストに使用するユーザー。自動で作られるため、先に存在している必要はない。 | tpch |
tpch_pass | テストに使用するユーザーのパスワード。 | tpch |
tpch_def_tab | 接続先oracleデータベースのデフォルト表領域。 | tpchtab |
tpch_def_temp | 接続先oracleデータベースのデフォルト一時表領域。 | temp |
num_tpch_threads | テストスキーマ構築を実行するユーザー数。 | 1 |
tpch_tt_compat | OracleTimesTenデータソース名を利用する。。 | false |
total_querysets | テストユーザーが1回ログインして、TPC-Hの1セット(22クエリ)を何回反復実行するか。 | 1 |
raise_query_error | エラー発生時にテスト全体を中止する(true)か、次のクエリを継続するか(false)。 | false |
verbose | 実行したクエリ自体も出力するモードのスイッチ。結果行も出るのですごい量になる。 | false |
degree_of_parallel | パラレルクエリクエリの並列度指定。 | 2 |
refresh_on | trueにするとTPC-Hのクセリセット実行ではなく、更新処理を実行する。 | false |
update_sets | refresh_onがtrueのとき、更新処理を何回実行するか。 | 1 |
trickle_refresh | refresh_onがtrueのとき、更新処理における挿入と削除の間隔を何ミリ秒あけるか。 | 1000 |
refresh_verbose | refresh_onがtrueのときに更新処理を実行するユーザーの処理内容を出力するモードのスイッチ。 | false |
cloud_query | TPC-H規定の22本のクエリセットとは別の13のクエリが実行されるモードのスイッチ。 | false |
上記は抜粋超訳なので、正確な解説を見たい場合に参照してください。
3. Configuring Schema Build Options
5. Configuring Driver Script Options
接続系、表領域などの話は、TPC-Cのときと同じです。指定する表領域だけは先にOracleの中に存在するようにしてください。
PostgreSQLと同様、パラレルクエリに対応しているため、その並列度を調整するパラメータがあります。
「cloud query」の件もMySQL、PostgreSQLのTPC-Hの回で触れてますし、特殊なパラメータはありませんね。
接続先を環境と合わせる以外は、特にオプションをいじらずに進めます。
スキーマ作成
テストで流す前に必要なスキーマ作成、及び、テストデータの投入を実行します。
hammerdb>buildschema .... ALL VIRTUAL USERS COMPLETE
処理が完了しても、データ生成のために立ち上がったクライアントプロセスは起動したままになります。
次の処理の前に、スキーマ作成用のユーザーセッションが完了しているか確認するコマンドを投げて確認し、完了ステータスになっていたら、そのセッションは一度破棄しておきます。
hammerdb>vustatus 1 = FINISH SUCCESS hammerdb>vudestroy Destroying Virtual Users Virtual Users Destroyed vudestroy success hammerdb>vustatus No Virtual Users found
テストスクリプトのロード
ここから先はMySQLと同じですので、さらっと流します。
hammerdb>loadscript Script loaded, Type "print script" to view
テスト実行用クライアント(Virtual User)の設定
ワークロードを実行するために接続する同時実行ユーザー数を確認・調整します。
今回も、こんな設定で。
hammerdb>print vuconf Virtual Users = 1 User Delay(ms) = 500 Repeat Delay(ms) = 500 Iterations = 1 Show Output = 1 Log Output = 0 Unique Log Name = 0 No Log Buffer = 0 Log Timestamps = 0 hammerdb>vuset Usage: vuset [vu|delay|repeat|iterations|showoutput|logtotemp|unique|nobuff|timestamps] value hammerdb>vuset logtotemp 1 hammerdb>vuset unique 1 hammerdb>print vuconf Virtual Users = 1 User Delay(ms) = 500 Repeat Delay(ms) = 500 Iterations = 1 Show Output = 1 Log Output = 1 Unique Log Name = 1 No Log Buffer = 0 Log Timestamps = 0
テスト実行用クライアント(Virtual user)の起動
設定に従ってクライアント(Virtual user)を起動します
hammerdb>vucreate Vuser 1 created - WAIT IDLE Logging activated to /tmp/hammerdb_5D6DEA05591903E243735383.log 1 Virtual Users Created
テストの実行
hammerdb>vurun
で実行し、終わるまで待ちます。
実行結果の出力例
1セット22本のSQLの実行結果なので、省略せずに見ていきましょう。
hammerdb>vurun RUNNING - Oracle TPC-H Vuser 1:RUNNING Vuser 1:Executing Query 14 (1 of 22) Vuser 1:query 14 completed in 0.394 seconds Vuser 1:Executing Query 2 (2 of 22) Vuser 1:query 2 completed in 0.094 seconds Vuser 1:Executing Query 9 (3 of 22) Vuser 1:query 9 completed in 2.404 seconds Vuser 1:Executing Query 20 (4 of 22) Vuser 1:query 20 completed in 0.529 seconds Vuser 1:Executing Query 6 (5 of 22) Vuser 1:query 6 completed in 0.35 seconds Vuser 1:Executing Query 17 (6 of 22) Vuser 1:query 17 completed in 0.503 seconds Vuser 1:Executing Query 18 (7 of 22) Vuser 1:query 18 completed in 2.307 seconds Vuser 1:Executing Query 8 (8 of 22) Vuser 1:query 8 completed in 0.708 seconds Vuser 1:Executing Query 21 (9 of 22) Vuser 1:query 21 completed in 1.899 seconds Vuser 1:Executing Query 13 (10 of 22) Vuser 1:query 13 completed in 0.938 seconds Vuser 1:Executing Query 3 (11 of 22) Vuser 1:query 3 completed in 1.079 seconds Vuser 1:Executing Query 22 (12 of 22) Vuser 1:query 22 completed in 0.306 seconds Vuser 1:Executing Query 16 (13 of 22) Vuser 1:query 16 completed in 0.797 seconds Vuser 1:Executing Query 4 (14 of 22) Vuser 1:query 4 completed in 0.722 seconds Vuser 1:Executing Query 11 (15 of 22) Vuser 1:query 11 completed in 0.17 seconds Vuser 1:Executing Query 15 (16 of 22) Vuser 1:query 15 completed in 0.408 seconds Vuser 1:Executing Query 1 (17 of 22) Vuser 1:query 1 completed in 1.902 seconds Vuser 1:Executing Query 10 (18 of 22) Vuser 1:query 10 completed in 1.588 seconds Vuser 1:Executing Query 19 (19 of 22) Vuser 1:query 19 completed in 0.844 seconds Vuser 1:Executing Query 5 (20 of 22) Vuser 1:query 5 completed in 1.43 seconds Vuser 1:Executing Query 7 (21 of 22) Vuser 1:query 7 completed in 0.789 seconds Vuser 1:Executing Query 12 (22 of 22) Vuser 1:query 12 completed in 0.656 seconds Vuser 1:Completed 1 query set(s) in 22 seconds Vuser 1:FINISHED SUCCESS ALL VIRTUAL USERS COMPLETE TPC-H Driver Script
こんな感じで、SQLは1~22がランダムに実行されて、それぞれの実行時間と、全体の実行時間が表示されます。
vuが1のまま、複数回実行しても、実行順序は同じだったりしますが、vuを2以上にしたとき、それぞれのvuでの実行順序は異なるようにできています。
さて、前回PostgreSQL編で、MySQLには付いていたインデックスが付いてなくて遅い!って話がありました。
気になって、Oracleに対して作ったテーブルにインデックスがどうやって作成されているか見てみました。
結果、、、、やっぱりPKのインデックスしかないやん。。。
SQL> column INDEX_NAME format a20 SQL> column TABLE_NAME format a20 SQL> select table_name,index_name from user_indexes order by table_name; TABLE_NAME INDEX_NAME -------------------- -------------------- CUSTOMER CUSTOMER_PK LINEITEM LINEITEM_PK NATION NATION_PK ORDERS ORDERS_PK PART PART_PK PARTSUPP PARTSUPP_PK REGION REGION_PK SUPPLIER SUPPLIER_PK 8 rows selected.
うーん。
でも、あっさり処理できた。PostgreSQLのときみたいに、返事がこなくなるような重い処理にはならなかった。。。
ドキュメントにあたってみても、
子表で外部キーの索引付けを行うと、次の利点があります。
子表に対する完全表ロックが防止されます。かわりに、データベースは索引に対する行ロックを取得します。
子表の全表スキャンを行う必要がなくなります。例として、ユーザーがdepartments表から部門10のレコードを削除する場合を想定します。employees.department_idが索引付けされていない場合、データベースはemployeesをスキャンして、部門10に従業員が存在するかどうかを確認する必要があります。
って、Oracle11gR2、12cR1、12cR2の「Database概要 -> 5 データ整合性 ->索引と外部キー」のところに同じ記述があるくらいなので、外部キー制約における参照元へのインデクス作成は自動じゃなくて任意です。
これ、実際にPostgreSQLのときと同じインデックスをつける前後で実行計画をとると、違いが出ます。
SQL-20の実行計画全部は貼り付けませんが、インデックス付ける前は、LINEITEM表へのアクセスは
| 28 | JOIN FILTER USE | :BF0000 | 950K| 18M| 7755 (1)| 00:00:01 | Q1,01 | PCWP | | | 29 | PX BLOCK ITERATOR | | 950K| 18M| 7755 (1)| 00:00:01 | Q1,01 | PCWC | | |* 30 | TABLE ACCESS FULL | LINEITEM | 950K| 18M| 7755 (1)| 00:00:01 | Q1,01 | PCWP | | 30 - filter("L_SHIPDATE"<TO_DATE(' 1995-01-01 00:00:00', 'syyyy-mm-dd hh24:mi:ss') AND "L_SHIPDATE">=TO_DATE(' 1994-01-01 00:00:00', 'syyyy-mm-dd hh24:mi:ss') AND SYS_OP_BLOOM_FILTER(:BF0000,"L_PARTKEY","L_SUPPKEY"))
といったように、テーブルフルスキャンが走りつつ、パラレルクエリ(PX)が動いていて、filterの中には、結合条件に使う「L_PARTKEY","L_SUPPKEY"」も現れています。
これに対し、インデックス付けた後は、
|* 26 | INDEX RANGE SCAN | IDX_L_PARTKEY_L_SUPPKEY | 23 | | 2 (0)| 00:00:01 | Q1,00 | PCWP | | |* 27 | TABLE ACCESS BY INDEX ROWID | LINEITEM | 1 | 20 | 25 (0)| 00:00:01 | Q1,00 | PCWP | | 26 - access("L_PARTKEY"="PS_PARTKEY" AND "L_SUPPKEY"="PS_SUPPKEY") 27 - filter("L_SHIPDATE"<TO_DATE(' 1995-01-01 00:00:00', 'syyyy-mm-dd hh24:mi:ss') AND "L_SHIPDATE">=TO_DATE(' 1994-01-01 00:00:00', 'syyyy-mm-dd hh24:mi:ss'))
のように、テーブルフルスキャンが消えてインデックスを使用し、filterから結合条件もなくなっています。
そして、やっぱりインデックス追加したほうが速くなりました。
インデックスなしでもそこそこ速いのは、パラレルクエリの恩恵でしょうか、と思ったのですが、試しにStandard Edition(AWS/RDS db.m5.xlarge)でやったらあっさり処理が終わったので、また別の理由のようですね。
PostgreSQL(手元の環境は10.7)にもパラレルクエリがありますが、インデックスなしのとき、振り返って実行計画を見ても、パラレルクエリは動いていないようです。
用意した環境のCPU数が少ないのもあるのですが、実行計画に「Gather」も「Parallel ほげほげ」も現れませんね。
パラレルクエリに関するドキュメントを読んでも、パラレルクエリが採用されない理由がわかりませんでした。
15.2. どのような時にパラレルクエリは使用できるのか?
まとめ
- OracleへのTPC-Hも、MySQLやPostgreSQLとほぼ同じ。
- パラレルクエリの並列度調整に対応している。
- PostgreSQLは外部キー制約を付けても、参照元にインデックスは作られない。が、任意でのインデックス作成を行わなくても、それなりに速い。
Oracleさん、雑な設定でも捌いてしまうのはやっぱりすげえし、動いてしまうがゆえに、雑な設定&雑なSQLを投げる人を量産してしまう罪作りなヤツでもある。
- 作者:樋口剛,篠田典良,谷口慶一郎,大沼由弥,豊島正規,三村益隆,笹田耕一,牧大輔,大原壯太,門松宏明,鈴木恭介,新倉涼太,末永恭正,久保田祐史,池田拓司,竹馬光太郎,はまちや2,竹原,粕谷大輔,泉征冶
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注意事項
どうやらHammerDB3.2でOracle用TPC-HのBuildschemaする際、管理用ユーザー名を「system」固定で投げてるっぽいです。
AWS RDS/Oracleに投げるとコケるところで気づきました。
RDSにはSYSやSYSTEMではログインできず、構築時に利用者として使える最強ユーザーの名前を指定して、それを使うことになります。
なので、HammerDBの「system_user」「system_password」はそのユーザーのものを指定しますが、残念なことに、HammerDBのソースが「system」でハードコードされてます。(パスワードは指定したパラメータから受け取ってる)
具体的な場所は、HammerDB3.2の場合、
「HammerDB-3.2/src/oracle/oraolap.tcl:795行目」です。
ここが「ユーザー名:system」で固定化しているだけでなく、このソースが書いてあるプロシージャが受け取る引数にもsystem_userがありません。。。
とりあえずなんとかしたい人は、ここのハードコードのところに、管理用ユーザーの名前を直接埋め込んでからhammerdbcliを起動してください。
オンプレ(特に自分しか使わないローカルなヤツ)だと、SYSTEM潰すとかしないから、これは気が付かないわー。
RDS以外にも、SYS/SYSTEM潰しているようなマネージドサービスがあったら、同じ事象にハマリます。(Oracle本家以外のDBaaSでAWS以外にOracle使えるところあったかな?)
暇なときに、GithubにIssue上げておくか。。。